ウラと大王 〜 桃太郎と鬼の話

提供: 有限会社 工房 知の匠

文責: 技術顧問 大場 充

更新: 2023年11月15日

ねらい

皆さんは、昔話の「桃太郎」を知っているでしょう。室町時代から伝えられ、江戸時代から広く日本全国に広まった「おとぎ話」のひとつです。このおとぎ話は、日本の古い神話や「言い伝え」を集めて記録したと言われている「古事記」と「日本書紀」にある、「吉備津彦の命(きびつひこのみこと)」が吉備(きび)に勢力をもっていたウラとその一族を攻めた戦いに関する言い伝えに基づいた話であるとする説があります。

私たちが知っている桃太郎のおとぎ話では、『桃太郎は、犬、サル、キジを家来にして、鬼ヶ島で人々を困らせていた「鬼たち」を退治し、鬼たちが持っていた宝を、桃太郎が自分を育ててくれたお爺さんとお婆さんが住む故郷に持ち帰った』という話です。しかし、鬼たちはなぜ退治されなければならなかったのでしょうか。この話には、なぜ「鬼たちが退治されなければならなかった」のかの「わけ」は書かれていません。書かれているのは、「悪い鬼たち」だったということだけです。

「鬼たちはもともと悪いことをする」と言う、日本人の誰もが持っている勝手な思い込みが正しいとして書かれているようです、それがこの話の大切な点です。「悪い人々は、いつも悪いことをするのが普通である」と言う、ある意味では正しいとは言えない考えにもとづかなければ、この桃太郎のおとぎ話はなりたちません。では、このおとぎ話のもとになった「言い伝え」から考えられることは、どのようなことなのでしょうか。

ここでは、そのような考えについて、吉備津彦(きびつひこ)とウラとの戦いが「なぜ起きたのか」という、そもそもの話から、筋道をたてて考えてみましょう。

目次

ここでの話の成り立ちは、以下の通りです。

第1章 はじめに
大和の大王(2020年3月16日掲載、2023年11月15日更新)

第2章 ウラたちが攻められたわけ
弥生時代の鉄
(2020年3月16日掲載、2023年11月15日更新)
吉備(きび)のウラと大和の大王の戦い
(2020年3月16日掲載、2023年11月16日更新)

第3章 桃太郎の話はなぜ広まったのか
出雲の国、たたら製鉄と鍛冶
(2020年3月16日掲載、2023年11月16日更新)
桃太郎の逸話は、なぜ童話になったのか
(2020年3月18日掲載、2023年11月17日更新)

第3章 おわりに
歴史と政治 〜 我々が「桃太郎」から学ぶべきこと
(2020年3月19日掲載、2023年11月17日更新)